虫展 −デザインのお手本− @21_21 DESIGN SIGHTレビュー

21_21 DESIGN SIGHTで開催されている虫展−デザインのお手本−展に行ってきました。(最終日に行ったのでこの記事を書いている時には展覧会は終わっていますが、記録とレビューのために書いていきます。)

Information

会期       :2019年7月19日(金) – 11月4日(月・祝)
会場       :21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
休館日      :火曜日(10月22日は開館)
開館時間     :10:00 – 19:00(入場は18:30まで)
入館料      :一般 1,200円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
展覧会ディレクター:佐藤 卓
          企画監修
          養老孟司

http://www.2121designsight.jp/program/insects/

所要時間は90分くらい。

自然について

虫について理解を深める展示から、虫の研究を応用したデザインの展示まで、虫とデザインをつなげるとても楽しく学びのある展覧会でした!
展覧会の最初にある企画説明にも書いてありましたが、確かに子供の頃は夢中になって虫を捕まえていたが、いつの日か生活の中から排除する対象となっていました。
ここで、人間-対-自然という対立構造を持ち出すことは簡単ですが、私は自然という考え方は人間という種を他から独立させ、その他を支配するための道具として生まれたのだと思っています。昔は人間も自然の一部でしたが、今の我々の生活で直接自然を感じられるものはとても少なくなっています。感じられたとしても、人間にとって好ましいものだけがフィルターを通して得られる程度でしょうか。この排除はおそらく近代の死を生活から排除する流れと同じように感じます。このあたりを調べてみるのもおもしろいかもしれません。
しかし、一見、排除されているようにみえても、虫がデザインなどを通して我々の生活の中に入り込んでいるという見方もできておもしろいです!

トビケラの巣

今回の展覧会で特に気になったのがトビケラの巣の展示です!

トビゲラはチョウやガに近い昆虫で、幼虫は水の中で、付近の落ち葉・枝・砂・小石などで巣を作る、水中のミノムシとのこと。

小檜山賢二氏作品キャプションより
トビケラの巣 ◉小檜山賢二 展示風景

そしてトビケラの巣は、自分の身近にあるモノを使い、作る巣の形や使う材料が異なるという非常に土着的でブリコラージュ的な作り方をしている。上の写真群はトビケラの巣を撮影した作品です。

トビケラの巣の形態が先にあって、構造を考えるという順序ではなく、手に入る身の廻りのモノを集めて、それらで機能を満たすよう、一つひとつ繋いでいくという構造的な作り方からヒントを得て隈研吾氏と3人の構造家によってデザインされたのがこちらの3種類の「トビケラの巣」です。

細かいディテールが美しく、極薄和紙によって骨組みが安定するというおもしろい技術まで使われています。

最近の自分が、デザインプロセスの中に人間の恣意を入れ過ぎないということに興味があるため、トビケラの巣にはとても惹かれました。

トビケラの巣(髪の巣) ◉隈研吾 アラン・バーデン 展示風景

こちらの髪の巣は髪の毛とナッツの殻からつくられたものです。髪の毛は引っ張りに強く、ナッツの殻は圧縮方向に強いという、ゴミで鉄筋コンクリートのようなことをするという面白い作品です。

トビケラの巣(髪の巣) ◉隈研吾 江尻憲泰 展示風景

こちらはトビケラが巣をつくるときに材料を「集める」と「くっつける」行為に着目してデザインされた作品です。発砲スチロールの球とネオジウム磁石と接着剤でできています。

まとめ

今回虫展を観て、まだまだ自然の中にはヒントがたくさんあるし、形態をそのまま模倣するのではなく、そこに隠れている性質や哲学を抽出することも重要であると気づかされた。
自然そのものは消費されない大きなエネルギーを持っているし、とてもフレキシブルだ。そこから人間が加工し、人間の尺度で解釈できる次元に落とし込んでしまうと、消費されてしまう。ガウディを例に出すと、カサ・ミラの屋根裏部分の構造は蛇の骨を参考にデザインされている。他にもガウディ建築のいたるところに自然からヒントを得た形態が散見される。自然そのもののエネルギーを拝借することができれば、ガウディのように長く魅了されるモノが作れるんだなと、展覧会の感想をまとめながら、そんなことを思った。

最後に、クスリときた虫マメチ!