サルトリーヌバーガー

SARTORINNE BURGER
改修設計・施工
2026年


Site:福島県南相馬市
Photo:中川雄斗
設計施工:中川雄斗

SARTORINNE BURGER(サルトリーヌバーガー)店舗の改修設計と施工。

本計画は、街の人が気軽に立ち寄り、店主と会話を交わしながらハンバーガーを楽しみ、時には音楽を介して人々が集まる場所をつくりたいという依頼から始まった。

計画では、建物と街の境界をできる限り固定せず、その時々の使い方や活動に応じて変化する空間を目指した。

店舗正面には外部から直接注文できるカウンターを設け、内部だった空間の一部を半外部化している。既存外部タイルはカウンター内部へと連続し、天井の緩やかなアールとともに、街から店へと人を引き込む空間を構成した。建具は全て開放することができ、一部は取り外しも可能である。街と店が一体となる開放的な状態から、落ち着いた内部空間まで、状況に応じて関係性を変化させることができる。

将来的には防音扉の設置も想定しており、現在の開放的な状態だけでなく、音楽に集中できる閉じた環境も実現できる計画としている。開くことと閉じること、その両方を内包する空間である。

ライブハウスとしては、床を上げたステージで演者と観客が向き合う一般的な形式だけでなく、空間中央で演奏する演者を観客が囲む形式など、多様な使い方に対応できる構成とした。ライブの形態によって人の関係性や空間の感じ方が変化し、同じ場所でありながら異なる体験が生まれることを意図している。

空間内部では、天井高さや床レベルに変化を与え、さらにアール天井を用いることで、様々な居場所をつくり出した。アール天井は街との緩やかな連続性を生み出すと同時に、ライブ時には人々を包み込み、一体感を生み出す装置としても機能している。訪れるたびに異なる活動や雰囲気に出会える空間を目指した。

既存建物の要素については、単に保存するのではなく、新たな役割を与えながら再利用している。薬局時代の棚やカウンター、タイル、天井下地、アルミサッシ、窓ガラスなどは、それぞれ元の用途から少しずつ役割をずらしながら空間に組み込まれた。かつて天井を支えていた下地は照明や配線を支える構造となり、カウンターは新たな接客の場となる。物を消費して置き換えるのではなく、異なる役割を獲得しながら存在し続ける状態を目指した。

また、地域で解体された建物からレスキューした古材や瓦、建具なども再利用している。建物単体の改修に留まらず、地域の中で失われつつある素材や記憶を別の形で受け継ぐ試みでもある。

施工においては、施主とともに工事を進め、一部はDIYによって実施した。工事の過程も積極的に公開し、地域住民が作業に参加する機会も設けている。完成した建物だけでなく、つくる過程そのものも街に開くことで、場所への関わりを育むことを試みた。

街と店、内と外、人と人、そして過去と現在。様々な境界を固定するのではなく、状況に応じて揺れ動く関係性として捉え直すことで、多様な活動を受け止める場所を目指した。

多様な関係性や複数の役割は、建築を豊かにするための一つの手段である。しかし、本計画が目指したのはそれだけではない。

街との連続性、ライブ空間としての可変性、既存部材の再利用といった説明は、この建築を理解するための入口にはなる。しかし、それらの説明によって建築そのものが尽くされることはない。

この建築や天井やカウンターや建具などの部分は常に、そこに与えられた意味や機能を超えて存在している。

本計画では、物や空間を単なる機能や象徴として扱うのではなく、それ自体が固有の存在として立ち現れることを大切にした。

どれだけ語ってもなお語り尽くせないものが残ること。その還元不可能な対象への関心や愛着が、建築に奥行を与えると考えている。

写真は今後追加していきます。

▼改修前