つくり方を考える

前の記事では、架構や空間、屋根や外壁、素材、家具、設備など、建築を形づくるさまざまな要素について考えました。

では、それらを実際にどのようにつくっていくのでしょうか。

何を使うのか。
どこから材料を手に入れるのか。
誰とつくるのか。
どこまでを既製品に任せ、どこを自分たちでつくるのか。

こうした「つくり方」も、建築のあり方を考える上で大切な要素です。


既にあるものからつくる

住宅に使われる材料や設備の多くは、すでに流通しているものから選ばれます。

品質や価格、施工方法が整理され、必要なものを安定して手に入れられる仕組みがある。

床材、建具、キッチン、照明、設備なども、さまざまな製品の中から選び、それらを組み合わせていくことができます。

これは、住宅を効率よく、確実につくるために重要な仕組みです。

一方で、建築に使えるものは、すでに商品として用意されているものだけではありません。

近くの解体現場に、まだ使える材料があるかもしれません。

地域の工場や倉庫に、使われていないものが残っているかもしれません。

知り合いを通じて、通常の流通では手に入りにくい材料を見つけられるかもしれません。

裏山の木を使うことができるかもしれません。

遠くから材料を運ぶのではなく、まずその場所の周りに何があるのかを探してみる。

そうすると、「必要なものを買う」というところから、「あるものをどう使うのか」という考え方に変わっていきます。

例えば、解体された建物から長さの異なる木材が手に入ったとします。

その場合、あらかじめ決めた寸法に材料を合わせるのではなく、手に入った材料に合わせて架構や家具のつくり方を考えることもできます。

材料の調達は、設計が終わった後に行う作業ではありません。

何があるのかを探し、そこから建築の可能性を考えることも、設計の一部になります。


既製品をどう使うのか

もちろん、既製品を使うことにも大きな意味があります。

規格化された製品を使うことで、品質を安定させたり、施工の負担を減らしたり、コストを抑えたりすることができます。

大切なのは、既製品を使うか、手づくりにするかという二択ではありません。

既製品を、その決められた使い方だけで使う必要もありません。

棚としてつくられたものを、空間を仕切るものとして使う。

建材としてつくられたものを、家具として使う。

異なる製品を組み合わせ、本来とは違う使い方をつくる。

既製品と現場でつくったものを組み合わせる。

既にあるものを利用しながら、その使い方を変えていくことで、新しい建築の可能性が生まれることがあります。

既製品を使うことと、既製のつくり方に従うことは同じではありません。

既にある仕組みを利用しながら、そこからどのような使い方をつくるのか。

その余地も含めて、建築を考えていきます。


誰とつくるのか

つくり方を考えるとき、材料だけでなく、誰とつくるのかも重要になります。

建築には、設計者だけでは持っていない技術があります。

大工には大工の経験があり、家具職人には家具職人の技術があります。

設備を扱う人にも、それぞれの専門があります。

そこに住み手自身の経験や、地域の人が持つ知識や技術が加わることもあります。

すべてを専門家に任せるのではなく、自分たちでできる部分をつくる。

知り合いに声をかけ、一緒につくる。

専門的な部分は職人に任せながら、仕上げや家具などは住み手がつくる。

そうした関わり方によって、建築のつくり方は変わっていきます。

それは、単に施工費を抑えるためだけではありません。

誰かと一緒につくることで、その建築との関係が生まれる。

地域の技術を取り入れることで、その土地にあるものが建築に残る。

自分でつくった部分があることで、後から修理したり、手を入れたりしやすくなる。

「誰とつくるのか」は、完成した建築だけでなく、その後の関係にもつながっています。


つくり方が建築を変える

こうして考えていくと、つくり方の選択は、ただのつくりやすさやコスト削減、工期短縮にとどまりません。

どこから材料を調達するのか。

誰とつくるのか。

何を既製品に任せ、何をつくるのか。

どこに時間や手間をかけるのか。

その一つひとつの選択によって、使える材料や技術、関わる人、つくることのできる形まで変わっていきます。

例えば、地域にある廃材を使うことを考えたことで、当初とは違う素材の組み合わせが生まれる。

職人と相談したことで、図面だけでは考えられなかったつくり方が見つかる。

住み手がつくることを前提にしたことで、将来も自分たちで手を入れられる構造や家具が生まれる。

つくり方を考えることによって、建築そのものの可能性も変わっていくのです。


建築コンセプトとつくり方

こうしたつくり方は、建築コンセプトとも関わってきます。

建築コンセプトは、形や素材を決めるためだけのものではありません。

どのようにつくるのかという選択にも、その建築の考え方は表れます。

そして、つくる中で生まれた発見が、建築コンセプトそのものを更新することもあります。

手に入る材料。

関わる人。

使える技術。

かけられる時間。

限られた予算。

そうした現実の条件と向き合うことで、最初には見えていなかった可能性が生まれる。

だからこそ、つくり方をあらかじめ決められた工程として捉えるのではなく、建築を考えるプロセスの一部として捉えてみる。

その中から、その場所と暮らしに合ったつくり方を探していきます。


つくることから、使い続けることへ

建築は、完成した瞬間に役割を終えるものではありません。

使い始めれば、壊れるものもあります。

暮らしが変われば、必要になるものも変わります。

設備を交換したり、家具をつくり替えたり、空間に手を入れたりすることもあります。

だからこそ、つくる段階から、その後のことを考えておくことが大切です。

どこを自分たちで直せるようにするのか。

どのように部品を交換できるようにするのか。

どこまで変化を受け入れられるようにするのか。

つくり方を考えることは、完成までの方法だけを考えることではありません。

その建築が、つくられた後も誰かの手によって変化し続けられる可能性を考えることでもあります。

つくられたものを使い、手を入れ、またつくり変えていく。

その繰り返しの中で、建築は完成時にはなかった価値を持つことがあります。


次の記事では、こうしてつくられた住まいを、時間の中でどのように使い続け、変化させ、次の人へとつないでいくのか。

「消費されない住まい」について考えていきます。