Architecten de vylder vinck taillieu 展 @TOTOギャラリー・間 レビュー

Architecten de vylder vinck taillieu 展に行ってきたので、感想を書いていきます!

Information

展覧会名(日)
アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー展 ヴァリエテ/アーキテクチャー/ディザイア
展覧会名(欧)
architecten de vylder vinck taillieu: VARIETE / ARCHITECTURE / DESIRE
会期
2019年9月13日(金)~11月24日(日)
開館時間
11:00~18:00休館日月曜・祝日 ただし11月3日(日・祝)、11月23日(土・祝)は開館
入場料
無料
会場
TOTOギャラリー・間
〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分
TEL=03-3402-1010 URL=https://jp.toto.com/gallerma

https://jp.toto.com/gallerma/ex190913/index.htm

所要時間は約70分です。

私は、自分で直接空間を体験したもの以外、興味を持ちにくいこともあり、海外の建築家は疎く、恥ずかしながら初めて名前を認識した建築家でしたが、展示を観て、いくつかの作品は写真などで見たことがありました。それもそのはず、2018年のベネチア・ビエンナーレ国際建築展で銀獅子賞を受賞している建築家ユニットなんですね。

TOTOギャラリー・間では、ベルギーのゲントを拠点に活動し、世界的な注目を集めつつある建築家ユニット アーキテクテン・デ・ヴィルダー・ヴィンク・タユー(以下ADVVT)の日本での初めての展覧会を開催します。

ADVVTは、自分たちがコントロールできない偶然性や既存条件も積極的に設計に取り入れながら、予算の多寡や新築・改修といった条件にとらわれず、多彩な空間を生み出してきました。

代表作のひとつ「カリタス」(2016年)は、取り壊しが進んでいた19世紀の精神科病棟の改修プロジェクトで、医師や療法士、患者とのディスカッションを重ね、屋根すら撤去されていた既存建物に温室を挿入し補修を行っただけで、多様な用途に応える開放的な空間を生み出しました。このプロジェクトを紹介した2018年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、時間をかけて建築と向き合う態度が、建築の未来それ自体を開かれたものにするという理解を得て、銀獅子賞を受賞しました。

教育も設計活動の重要な一部分と考えているADVVTは、本展覧会のためにこの春、東京工業大学においてワークショップを実施しました。ADVVTの作品のコンセプトを学生が読み解き、そのコンセプトを再解釈し、日本というコンテクストに挿入する際にどのように設計に反映されるかを探究することで、ベルギーと日本のコンテクストの相違だけでなく、普遍的な建築のエッセンスを抽出しようとしています。

会場ではワークショップで制作した模型やドローイングを交え、柔軟な発想で与条件をポジティブに転換するADVVTの作品と、彼らのまなざしをぜひご覧ください。

TOTOギャラリー・間 HP 展覧会説明文より

VARIETE / ARCHITECTURE / DESIRE

この展覧会はVARIETE / ARCHITECTURE / DESIREという副題がついています。

ADVVTの多種多様な作品の実践−ヴァリエテ[VARIETE]。
建築をつくることのみならず、常に建築のあり方を探求する姿勢–アーキテクチャー[ARCHITECTURE]。
そして建築に属するふるまいのデザインを希求しつづける–ディザイア[DESIRE]。

展覧会キャプションより

この副題はADVVTのあり方を表明しているように受け取れるが、それと同時に、一つ一つの作品の表現にまでこのテーマが及んでいるのを感じることができる。

これは限られた予算と、狭小敷地に立つ既存の樹木を切らずに、様々な制約を整理、検討してできた住宅作品である。(ベルン・ハイム・エイク)
ものの組み合わせかたや、色の使い方、建築空間の構成の仕方、など。一つの住宅の中にも先ほどの「多様性、建築のあり方、建築のふるまいのデザインへの希求」で溢れている。
特に、ものの組み合わせ方、ディテールの作り方が、とても好みです。実物を観にいきたくなります!

また、上の展覧会説明文の中で、「カリタス」という作品では医師や療法士、患者とのディスカッションを重ねた上で、既存建物に温室を挿入し補修を行っただけで、多様な用途に応える開放的な空間を生み出すという、決して建築家の美的判断のみによってつくられるものではなく、そこで発生する「自分たちがコントロールできない偶然性や既存条件も積極的に設計に取り入れ」そこに強度を持たせるというところがとても興味深いです。
彼らのリサーチの仕方や、偶然性などを設計に取り込む際の設計の自由度のような感覚をもっと知りたいと思いました。

展覧会の作り方

自分も所属する事務所の展覧会を担当したことがあるので、建築の展覧会の難しさはちょっとわかる。まず、展示するものは本物の建築ではないため、展覧会で何を観てもらうのかが難しい。基本は図面やドローイング、模型となってしまう。本展も展示されているものは似たようなものだが、切り口がおもしろかった。
上の展覧会説明文の通り、本展は展覧会の前に東京工業大学においてワークショップを実施し、ADVVTの作品のコンセプトを学生が読み解き、そのコンセプトを再解釈し、日本というコンテクストの中で反映させて設計したものも一緒に展示されている。展覧会の中に教育が入り込んでいるのだ。
そして、それがベルギーと日本の相違を探求するとともに、彼らの作品のコンセプトをより深く読み解くことや、一つのコンセプトから表現の広がりを知ることに繋がる。
具体的な展示物としては、ADVVTの作品、似たコンセプトを持つ日本建築家による作品、それらを学生が読み解き設計した作品のドローイングや模型が並んでいる。

モノの処理

ここでADVVTのモノの処理について考察してみたい。
というのも彼らのディテールは簡素と表現してもいいのだが、私はそれを小屋などにある美学的な評価で終わらせたくないと思った。
なぜなら、私は彼らのモノとモノの組み合わせかたや、色による周辺との差異化は簡素化ではなく、脳の情報処理の負荷を高めていく操作のように感じたからだ。
対比的な建築の作り方としては一つの空間をひとまとまりのものと見せるためにモノの物質性を消したり、モノ同士の繋がりを見えなくする手法だ。
しかし、ADVVTは下地をそのまま見せたりしながら、別々の材同士を一つのものに見せるような組み合わせかたをしていないように感じる。また、逆に色を使う場合も、同化よりは異化の効果を狙っているように思われる。
我々がものを観るときに、同じカテゴリーに入る部分は脳の処理負荷が少なく同一化する。見えているのに観ていないという状態だと思う。しかし、ADVVTのモノの組み合わせ方は、その同一化を避けているように思う。必然、それぞれの材が独立して、材自体の持つ情報も極力豊富な状態が保たれているため、脳の処理負荷が大きくなる。

まだなんとなくだが、物質主義はモノが持つ情報のみに期待するしかなかったが、それも繰り返されると処理負荷は軽くなる。本展ではそれだけに寄らない、消費に抗うためのヒントを得られた気がする。ADVVTの実施設計図面なども見てみたい。